AIに仕事を奪われた男

夫婦はバランスが大事

私は家事分掌のうち、炊事をガッツリ担っている。手際が悪く、決して上手ではないが、食べることが好きなのと健康面のために、フルタイム勤務時もいくら帰りが遅くなろうとも基本的に家でご飯を作るようにしてきた。
一方主人は食への興味が薄く「カロリーやタンパク質が摂れれば良い」というような印象を受ける。大変消極的である。もちろん自炊はしてこなかったし、私のご飯よりマクドナルドの方が好きである。本人はそう言わないが、口にしたときの反応で分かってしまう。トランス脂肪酸によってテンションが上がるのだ。酷い。
昨年は身体的に辛かったこともあって外食に頼ることも多かったが、10月ごろに帰りが10時過ぎになった際、一度だけ主人が夕ご飯を作ってくれたことがある。他にも数回あったかもしれないが忘れてしまった。申し訳ない。しこたま残業して帰宅する妊婦ってどうなのかしらと思うが、こうでもしないと仕事が回らない悲しい現実があった。
以下のようなトーク履歴が残っている。

「今日は少し遅くなります」
「やっぱりうどんがいい」
「うどんのスープ作るやつまだある?」
「それどんなものだっけ」
「そうめんのつゆとかつくるやつ」
「あと15分くらい」
「液体」

主人の言う「うどんのスープやそうめんのつゆなどを作る液体」というのは、創味の麺つゆのことである。冷凍庫には、スギ薬局の冷凍うどんがストックされている。きっと麺つゆを使って温かいうどんをこしらえてくれるつもりなのだ。偉いのではないだろうか。
そして心身ボロボロになって帰宅した私に用意してくれたのがこちら。

素。これが真の素うどんだ。何も乗せてはならぬ。私はこの潔いほどの素うどんに、冷凍ほうれん草をそのままぶち込んで食べた。おいしかった。

その2週間後、酷い便秘で人生で初めて仕事を休み、寝込んでしまったことがあった。当然ご飯を作ることはできないので、主人に買ってきてもらうことにした。

鍋焼きうどん。大好物である。気が利くチョイスに感謝しようとしたところ、「◯◯ちゃんのはこっちだよ!」と、もう1つの肉肉しい丼を手渡された。
この世に体調不良に苦しむ妻にガーリックビーフピラフを買ってくる夫が存在するだろうか。存在した。
この時は流石にちょっと怒って交換してもらった。「力がつくように」だとかそういった言い分には一切耳を貸さなかった。私は仏ではないのだ。
左上に写っているのはみかん。みかんブームMAXの時期だったので、こちらは嬉しかった。やっぱりラブである。

我が家はこんな調子なので「うちの旦那、バリバリ料理できます!」という家庭に羨ましさを感じることもある。しかし、そうなると私の出番がなくなるか、逐一手際の悪さを指摘されて泣きながら調理をすることになるに違いない。そう考えると、終始無表情ではあるが、出されたものはきちんと残さず食べてくれる主人と私は、もしかしたらバランスが取れているのかもしれない。

Siri VS 主人

主人は野菜があまり好きではない。私がサニーレタスを千切っていたりすると、近くに来て食材をじっと見つめ「今から野菜を食べさせられるのだな」ということを悟った目をする。本日のメニューの偵察以外は、大体いつもパソコンに夢中になっている。そんな中、調理の補助をしてもらうことがある。タイマーの設定だ。
調理において、時間を正確に計る機会は多々あるが、我が家はキッチンタイマーを置いていない。調理中にiPhoneを触るのは、iPhoneが汚れる、もしくはiPhoneの汚れが手に着く気がして憚られる。そのため、圧力鍋を使うときなどは、3メートルほど離れたデスクに腰掛けた主人に「ねえねえ!ちょっとタイマー2分でかけてほしいな〜!」とお願いして、iPhoneのタイマーをセットしてもらうのだ。主人がいつも快くやってくれる仕事である。アラーム音に加え「2分たったよ」と肉声で告知があるのも嬉しい。

しかし、主人のその役目も終わりが来た。AIの導入、所謂Siriというやつである。「いやいやiPhoneでも使えるでしょうが」と思われるかもしれないが、大学の講義中にこっそりTwitterでも見よう(不真面目)かという時に「ピピン!」と誤作動してしまうことが多発したので、ずっと機能をオフにしていたのだ。なので、私はiPadを買ってもらってから始めてSiriを活用するようになった。

「Hey、Siri!タイマー6分でかけて!」
「Hey、Siri!タイマー止めて!」
「Hey、Siri!タイマー10分でかけて!」
「Hey、Siri!タイマー止めて!」
「Hey、Siri!タイマー15分でかけて!」
「Hey、Siri!あと何分!?」
「Hey、Siri!タイマー止めて!」

土鍋でご飯を炊くのもなんのそのである。何回もしつこくタイマーをセットさせられても時間を確認されても文句一つ言わない。AIってすごいなあ。

Apple社の優秀なAIに、主人は1つ家庭での仕事を奪われてしまった。正に日本の未来の縮図。恐るべしである。
そんな主人も、炊事に関してSiriにはできない仕事を任せられることがある。
以前農協で購入した1/1サイズの小さな白菜に、でっかいカナブンが付いていたことがあり、虫isムリな私はそれがトラウマになってしまった。それからは1/1白菜を触る前に、主人にカナブンチェックをお願いしている。表側の葉を数枚めくり、虫がいないか綿密にチェックをする。なんとも頼もしいものである。タイマーをかけることだって、日に3回くらいなら嫌がらずにやってくれるに違いない。そんなに頼んだことないけど。

Siri VS 主人。軍配は主人にあがった。カナブンチェック&虫の除去ができるAIが我が家にやってくるその日までは、主人の助けが必要なのだ。


おまけ


正月を迎えてしまった後でなんだが、12月24日は私の誕生日だった。主人にビーフシチューを作ってもらう約束をしていた。とても美味しくできていたし、「デザートだよ」と買ってきてくれたシャインマスカットもとても甘くて美味しかった。飲み物はシャンメリーである。

25日は、私がクリスマスディナーをこしらえた。ポテトだけはコーラについてきた無料券を活用してマックで調達してきた。少ない油でチキンが美味しく揚がったのが良かった。我が家には普段使い用のオリーブオイルと、風味付け用のごま油しか置いていないのだ。ピザは生地がイケていなかったので、要改良である。飲み物はシャンメリーだ。

こちらは父の誕生日祝い(入院していたので1ヶ月遅れ)も兼ねたケーキ。いつもタカナシのクリームを使っているが、下の25日に作ったクレープの写真のように、ボソっとしてしまうのを恐れて結局ダラダラになってしまうことが多い。

洋菓子が大好きなので、美味しくて見た目のいいものが作れるように少しづつ経験値を上げていきたいものである。