私の主人は酒を飲まない

酒に弱い夫婦

私はお酒があまり得意ではない。まず、単純に量が飲めない。中学生の保健の授業で行ったパッチテストでは、皮膚が真っ赤になってしまったのを覚えている。加えて、特にビール・ワイン・日本酒などは鼻先でモワッとして好みの問題として飲めない。
職場関連の大きな飲み会では「酒席ですので、お車でのご来場はご遠慮ください」というような文言を付けておきながら瓶ビールしかないことが多いので大変腹立たしい。そういうときはボスを自宅まで迎えに行き、瓶コーラや瓶烏龍茶をたくさん空けてオードブルを堪能し、帰りにはボスを自宅まで届ける役目となった。他人の酒代を払い、タクシーとなる。なんとも滑稽である。別に嫌じゃなかったけどね。
ワインでも、ホットワインだけは学生時代に行ったヨーロッパ旅行の際に飲んでから少しだけ好きだ。寒い寒い中欧のどこかの国…チェコハンガリーだった気がする。あまりモワッとしなくて、身体が温まる。アルコールが入っているのだかいないのだか分からないが、思い出の飲み物である。
友人との飲み会のときは、カルピスソーダと交互に甘い炭酸の入ったカクテルなどを飲む。連チャンでお酒を頼むと気持ち悪くなる可能性が高いし、なんとなく乳酸菌が胃を守ってくれている気がするのだ。以前、魚民のブルーハワイとかいう真っ青なカクテルで悪酔いしてから、飲み過ぎには気をつけている。
家で全く飲酒をしなかったかというと、妊娠前には、時々家に置いたチョーヤの梅酒を炭酸割りで飲む他、缶チューハイのほろよいでほろ酔いになることがあった。3%で効き目十分である。普段から好んでは飲まないが、たまにちょっとだけ自分の好きなものを飲む。お酒とは、そんな付き合い方をしている。
妊娠してからは勿論全く飲んでいないが、母乳育児希望の私は、この先また1年はお酒を飲むことはないだろう。

一方主人は、私よりお酒に弱い。少し口をつけては、やれ「気持ち悪い」「頭痛い」などと体調不良を訴える。記憶では、付き合う前の3回目のデートで刈谷駅のお洒落な飲み屋さんに誘ってくれたはずなのだが、あのときカクテルをしっかり飲んでいたのは幻かもしれない。
とにかくお酒には手を付けず、コーラやジンジャーエール、甘いカフェオレを好む。スターバックスではホイップクリームがモリモリ乗った新作を注文する。糖分の取りすぎはやや心配ではあるが、アルコールより疾患のリスクはマシだと思うので、そんなお酒が苦手なところも良いところだと思っている。勿論自宅での酒代がかからないのも良い。酒もタバコもやらない、リーズナブルでかわいい主人である。

1月3日、サイゼリヤにて

主人が珍しく「初売りに行きたい」と言って、人気のない洋服の青山で紳士用靴下3足900円を1割引で買った後、昼食をとっているときだった。

「俺ね、この前忘年会でビール飲んだんだけどさ…」
「えっ、飲んだの?チャリだったでしょ?」
「チャリは引いて帰ってきた」

真面目である。我々が住むアパートは、最寄り駅から徒歩10分といったところだ。

「珍しいね」
「毎年忘年会だけは飲むんだけどさ」

年一である。

「1年ぶりにビールを飲んだんだけどね」

本当に年一である。

「味がね、ちょっとだけ、ビールが好きな人の気持ちが分かった気がするね」

そう言って主人は笑った。主人も、もう30歳。先月は病院で高校生に間違われていたが、紛れもなく大人なのだ。

「俺、半分も飲んじゃったよ」

すごい。
舐めたか舐めてないかくらいの量で頭痛を催していたあの主人が、半分も…。そこには驚きと、少しだけさみしさがあった。かわいい主人がビールの味を覚えてしまい、いつかは毎晩2本缶ビールを飲むメタボおじさんになってしまうのではないかと。そんな未来の可能性が見えてしまった。



「ジョッキ半分も飲めたんだね」
「いや、ジョッキじゃなくて乾杯用のやつ」



グラスだった。
乾杯用グラス半分。

中ジョッキの容積は大体435ml。それに対して乾杯用グラスの容積は170mlである。多く見積もっても100mlを上回ることはない。

そんな微々たる量で「俺、飲んじゃったんだよね…」と語る主人。いつまでもそのままでいてほしいと思う。

おまけ

キャプテン メロン 600ml

キャプテン メロン 600ml

  • メディア: 食品&飲料
 

 アイキャッチ用の写真は、キャプテンメロンというシロップで作ったメロンソーダである。炭酸水で割れば自宅で無限にメロンソーダを生成することができるという、メロンソーダ好きにはたまらない商品だ。無限と言っておきながら、我が家では一瞬でなくなってしまい、健康面から二度と買わないと誓った。