ブロッコリーが苦手な人は、おかかと和えてみてほしい

ブロッコリーは森である

子どもの頃、母から「好き嫌いが多い」とよく叱られた。だが、私自身はそうは思っていない。世間には、食物アレルギーや宗教上の特別な理由もなく「肉が嫌い」「魚がムリ」「野菜が苦手」 というようにジャンルごとダメな人がいる中では、比較的好き嫌いせずに何でも食べる方だと思っている。
お肉も魚介類も好きだし、野菜では、甘酸っぱいトマト、とろとろにとろけるナス、くたくたになった玉ねぎなど、好きな食材がたくさんある。セロリや春菊など、クセの強い葉っぱも大好物だ。
子どもの頃は、きのこの中でもシメジとエリンギが苦手だったが、大人になって旨味が分かり、克服することができた。野菜という括りではないが、酢の物なども好んで食べるようになった。あとはタバスコの青。他にはない独特の酸味がクセになる。大人になると、こうも味覚は変化するのだと驚いたものだ。

味覚が変化していく中、大人になっても変わらず苦手な食べ物がある。ブロッコリーだ。よく似たカリフラワーや、ひよこ豆パクチーなどもあまり好んでは食べないが、この中でより高い頻度で出現するのはブロッコリーである。特に、生野菜と共にしれっとサラダに乗っているのが気にくわない。フレッシュなサラダの片隅に「僕は飾りですよ」とばかりに一片だけ気取って鎮座している。見栄えをよくする目的ならパセリにしてほしい。私はパセリは食べる派だ。
幼い頃からアンチブロッコリーだった。あの咀嚼したときのモソッとした感覚と、青臭い味が苦手なのだ。マヨネーズをかけたり、チーズをかけてグラタンにしたりするなど、母なりに工夫して食べさせようとしてくれたが、それらはどこまでも
「マヨネーズとブロッコリー
「チーズとブロッコリー
でしかなく、親元にいるうちに好きになることはなかった。

ブロッコリーは食べ物ではない。あのモリモリとした形は、さながらである。二十数年間、そう思って生きてきた。
そんなアンチブロッコリー人生を変える一品に、数年前に出会った。社食で食べたおかか和えである。

鰹節と醤油が起こした奇跡

よくよく考えれば、マヨネーズもチーズも乳製品である。どちらも好きなトッピングだが、ブロッコリー森感を打ち消すにはパワー不足だ。
一方おかか和えは、パンチの効いた醤油味で青臭さを打ち消してくれる。さらに鰹節の風味がブロッコリーを海へと誘う。西洋野菜故にマヨやチーズの方が合うイメージだが、青臭さを消すための効果的なアプローチとしては、和風の味付けの方が適当だったのだ。
初めて口にしたとき、「おいしい」と思った。それどころか「もっと食べたい」と感じるほどだった。
残念ながら食感は変わりないが、醤油と鰹節の旨味に気を取られてどうでもよくなってくる。
乱暴かもしれないが、とにかく乳製品とは比較にならないほどブロッコリーの嫌な部分を吹き飛ばしてくれる。そんな味付けなのだ。

作り方は、ブロッコリーを茹で、鰹節と醤油で和える。以上である。

実家からお裾分けしてもらった小さい房をダイナミックに切ってしまった上に、しっかり茹ですぎて色が悪くなりビジュアルは△だが、味は間違いない。

往年のブロッコリー嫌いが「おいしい」と感じたおかか和え。この世にブロッコリーが苦手だという人はたくさんいると思うので、試しに一度作って食べてみていただきたい。もしかしたら、気に入ってもらえるかもしれない。
1つ苦手な食材が減るというのは、いくつになっても嬉しいものだ。