BGMにはこだわりがほしい


グリーングリーン
『夏は来ぬ』
『われは海の子』



これらの曲から皆さんはどんな印象を受けるだろうか。初夏の爽やかな風、深い緑…名曲であるが故に、容易にその情景を思い浮かべることができるだろう。
これらは、私のかかりつけの歯医者でループ再生されている曲である。どれも良い曲ではあるが、問題はこの年の瀬にも何の躊躇いもなく同じ曲を垂れ流しにしていることだ。

冬は来ぬ

季節は冬。なんなら十二月も下旬に入り、クリスマスやお正月というイベントが迫っている。「クリスマスが近づくと、クリスマスソングしか流れないからイヤなんだよね〜」という方もよくいるが、『われは海の子』よりは100倍マシではないだろうか。流石の海の子も、今頃煙たなびく苫屋で凍えているに違いない。
更に言えば、無印良品やちょっと小洒落たカフェで流れているようなスカしたボサノヴァ風にアレンジされているのも鼻に付く。ボサノヴァであり、スカではない。それと、無印良品ではケルト系の旅情をひしと感じる音楽が流れていることを今思い出したので、ワールドミュージックに造詣の深い無印良品さんには謝罪しておきたい。
ちょっと検索をかけてみたら、音源を見つけた。このCDである。

ほのぼのボッサ~やさしくなりたい

ほのぼのボッサ~やさしくなりたい

  • 発売日: 2012/07/27
  • メディア: MP3 ダウンロード
どうやら三陸鉄道の復興支援のために企画されたCDだそうだ。スカしたとか言ってしまったことも謝罪したい。

とにかく音源には全く罪はないが、歯医者のBGM選定だけは怠慢であり、許されざるものである。ほのぼのボッサにやさしくなれない。


ある病院の待合室で

話は変わり、先日、主人とインフルエンザの予防接種に行ってきた。どこもかしこも予約でいっぱいの中、予約なしで受けさせてもらえる素晴らしい病院を見つけたのだが、Google マップでの評価がとても低い。なんと星2。口コミには事実かどうか分からないが、「この程度の風邪で来るなと言われた。サイヤク!」など、先生に無碍に扱われた患者たちの愚痴が書き連ねてあった。多少不安はあったが、「予防接種だし、どこでも同じだろう」と、その病院に行くことに決めた。

土曜日の朝、個人宅に併設された小さな病院に入ると、聴いたことのある弦楽編成の音楽が流れている。どうも待合室に不穏な空気を醸し出しているこの音楽。思い出した。芥川也寸志の『トリプティーク』だ。
YouTube
かの有名な芥川龍之介の三男、芥川也寸志。詳しい説明はGoogle検索にお願いしたい。

この曲は、自分の高校の入学式で弦楽部によって演奏された、思い出の曲である。辛かった受験を乗り越えて晴れて合格した新入生に向けてこの強烈な選曲はどうかと思うが、自分も諸事情で大学の卒業式に『フィンランディア』を演奏することになってしまったことがあるので人のことは言えない。「卒業おめでとう!」の思いを込めて思い切りシンバルを演奏した。

モーツァルトチャイコフスキーが…というライト層のクラシック音楽ならまだわかるが、ここで芥川也寸志である。優しそうな受付の女性や看護師さんではなく、先生の趣味だと推測するのは容易である。
病院の待合室に芥川也寸志をチョイスする先生など、偏屈にきまっている。星2の評価も頷けるというものだ。
案の定、予防接種前の診察は顔をチラッと見ただけで、顎をしゃくって別室へ送られた。星2。注射は痛かった。星2。


結局は人の趣味

私は歯科医院の選曲を許すことはできないが、病院の待合室にあまり似つかわしくない芥川也寸志という選曲は大歓迎。結局は人それぞれの好みなのである。

許すとか許さないとか何を偉そうにと思われるかもしれないが、私は気に食わないちょっとしたことに勝手に腹を立てたりするそんな時間が好きだ。誰かに特段迷惑をかけているわけではないので、独り言だと思って許してほしい。



おまけ「楽曲について」

グリーングリーン
http://j-lyric.net/artist/a00126c/l016788.html
歌詞が大変意味深であることで有名である。

『夏は来ぬ』
「におうかきねに」と「早起き鳴きて」の旋律のジグザグが非常に小気味良い。そのあとの伸びやかな旋律によって、初夏の香りで胸がいっぱいになる。

『われは海の子』
小さい頃は「われは海の子 知らない子」と勘違いしており、『赤い靴』の女の子のような可哀想な感じなのだと思っていたが全然違った。力強いリズム、なぜか金太郎のような坊やを想像してしまう。「はいしどうどうはいどうどう」とは何の掛け声なのだろうか。